~1つの青春の終わり、それでも舞台は続いていく~もしがく 最終話 感想

皆様、おはようございます。
消しゴムって使い切る前にだいたい無くしませんか?

今回は、もしこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう 最終話についてです。

あらすじ

飲酒トラブルを起こした是尾礼三郎の責任を肩代わりし、久部はWS劇場の金庫から51万を横領する。
しかし嘘を塗り固めた挙句にそれが発覚。WS劇場を追い出され、リカからも見限られる。
そうして、この期間に得たものをすべてを失った久部は八分坂を去る。
2年後、細々と弁当屋の配達をする久部は、配達先の公共施設で八分坂のかつての仲間たちが演劇練習をしている風景を目にする。久部から彼らへ、そして彼らからもまた別の誰かへ、演劇への情熱は伝播していく。
この世はすべて舞台。ノーシェイクスピア ノーライフ。
再びシェイクスピア全集を手にした久部は、新しい喧噪へと悠々と向かっていく。

感想

今日の樹里…一世一代っぽい告白を「私はそうでもないです」と何とも言えない返事で粉砕する。

終わっちゃいましたね。
いい最終回だったと思います。終わってしばらくこのドラマのこと考えていました。
やはり創作物は、こういう余韻に浸れるかどうかで評価が変わると思います。

まず菅田将暉の演技。
六郎に冤罪かぶせたことがバレるシーン、横領を疑われるシーン、両方とも見ごたえありました。
表情とか、間の取り方、急にデカい声になるところ。
次何を言い出すか分からない不気味さがありました。ちょっとデスノート最後の月くんみたいな雰囲気ありました。
やっぱ菅田将暉はこうあって欲しい。殺意の無いやり取りで急に人に矢を放つような、そんな化け物じみた演技をずっと見ていたい。
鎌倉殿の13人、MIU404、そしてもしがく。
最初ぶっちゃけ嫌いな俳優でしたが、実力で黙らされました
もう好きです。

久部は、強い情熱と実力はあるんだけど不器用さと若さ故にどうしても極端な方向な進んでしまう、三谷幸喜が思う「若者の危うさ」を投影したキャラなんじゃないかと思います。
舞台に関わっているときは貫禄があるが、リカの押しやトロの威圧感には弱かったり。
悪者を演じるが、是尾礼三郎の件は最後まで伏せ、弁償の後払いも辞退して忠義を尽くしたり。
こういうぐちゃぐちゃしたバランスの悪さによって破滅していきましたね。
初回はこいつ好きになれんわ、て思っていたのが最後にはそのハチャメチャな部分を愛らしく感じるようになりました。おそらくこの辺は意図的に演出されていますよね。
実力があるのは分かってる分、それを上記のような不器用さで台無しにしているのを歯がゆい思いで見つめている視聴者の方も多かったのではないでしょうか。
最後まで見直すと、非常に人間らしい良いキャラだったと思います。

樹里は最後までこの物語の良心でしたね。
様子がおかしい久部との1対1のシーン。よく耐えてたなぁと思いました。
六郎への冤罪について開き直った久部に引きながらも、彼を感化させるべく必死に声を絞っているところは胸を焼かれました。
「時間ありますか?」
「後にしてくれ」
「大事な話なんです」
「じゃあ最初から聞くなよ!」
のコミカルなやり取りも良かったです。日常にありがちなやり取りをメタ的に突っ込むのは三谷幸喜あるあるな気がします。

ちょい不憫な目にあいながらも、リカにパワハラされながらも、へこたれずに舞台脚本に協力しその圧倒的光属性で久部の闇落ちを緩和する。
それでいて蓬莱には微妙に当たりが強かったりストレス解消に甘栗をむさぼったり酒仰いだり。
浜辺美波でここまで等身大の役を見ることが今までなかったです。凄い新鮮でした。
可愛いごり押しの役よりこういう役の方がウケがいいと思います。

六郎もね、もうずっと嫌いだったんですよコイツ。
自分をクズだと気づいていない一番めんどくさいクズだと思ってました。
でも自分に冤罪かけた久部に切れないどころか、「疑い晴らしてくれてありがとう」と純粋に感謝してるところで心が浄化されました。
この役者さん(戸塚純貴)のことはしばらく記憶に残りそうです。

脚本はいろいろ粗があるような気はしましたけどね。
個人的に一番疑問だったのは久部が所属していた劇団「天上天下」主催者・黒崎のムーブです。
久部とは最初から一触即発でしたが、物語中盤で彼の劇団の練習風景を見て認めている描写があったんですよね。
んで最終回で久しぶりに出たと思ったら是尾礼三郎をそそのかして飲酒トラブルを発生させ、結果的にこれが原因で久部は失脚します。
中盤あんないい感じだったのに急にどうした?と思いました。ライバル関係とはいってもクリーンなものである印象だったんですよ、急にこんな暗いことし始めるのに納得できる背景が少なすぎる気がしました。
前話で蓬莱が久部を破滅させるみたいな引きをしていましたが、どう考えても原因コイツです。
生き馬の目を抜くようなシビアな競争社会の表現だったのかもしれませんが、キャラのブレを感じました。

六郎が冤罪かけられるところも、ハンカチが衣装に入ってるだけで全員が微塵も疑わず辛辣に責めるという、類型的すぎる群衆心理が没入感を削いでいました。
全体的にこのドラマ、劇団員がわちゃわちゃ文句言ってるシーンが多すぎるんすよね、あんなん長々見せられたら普通はチャンネル変えますよ。

リカとの決別、ここ、一番心えぐられました
この二人の関係は回を重ねるごとに紆余曲折を経て濃密になっていき、同棲の話も持ち上がるほどでした。
二人でもっと大きい町に舞台を構えようという野望を語り合っていたときの、可能性に満ちたまさしく青春のひととき。
しかし横領が発覚して久部に後が無いことを悟ったリカはきっぱりと彼を捨て、タレントという自分の道を進むため町を出ていきます。
こんなあっけない幕切れなのか…と唖然としました。
なんか失恋の喪失感を疑似体験した気分です。
久部が町を出るときに浮かんだのがリカのダンスだったのも印象深いです。
この辺は演出としてかなり好きでした。
久部という若者の1つの青春が終わった…て感じのビターな場面でした。
フジファブリックの「若者のすべて」を聴きたくなりましたよ。

そして2年後。
黒崎とトロは大成、リカはタレントとして着実に成果を出している。
蓬莱も放送作家になっている。
そんな中、久部は凋落したジェシー才賀の弁当屋で働き、配達を行っている。
この残酷な対比がこのドラマのほろ苦い余韻につながります
訪れた施設で偶然仲間たちの舞台練習を目撃するとこ、聞こえてきたのがトニーのライサンダーのセリフだったのが不意打ち感ありました。
うる爺の元気そうな姿も観れて嬉しかったですよ、予定調和といってしまえばそれまでですが、やはり最後はみんなが笑っているところを見たいですからね。
久部はまだ、道の途中、舞台の最中。
他と違って歩みは遅いながらも、自分が築き上げた小さな幸せに少しだけ背中を押され、果てしない道へとまた向かっていく。
上質なビターエンドだったんじゃないかと思います。

というわけでこのドラマの各話感想はこれで終わりです。
いや、正直途中から義務感で観てたんですが、最終回でこんな感情揺さぶられるとは思いませんでした。最後まで観てよかったな、と思える作品でした。

長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
私の舞台「枝豆逃避行」をこれからもよろしくお願いします。

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